|
彼は、店の中に自転車を停めようとした。 私と視線が合うと入り口まで自転車をバックさせて、停めた。 私は、プリンターにかかっていたので、 (プリンターは店の奥にあって、 カウンタ−には販売員が一人いるのだ。) 彼が焼増しを注文しに来たのは知らなかった。 カウンターにお客さんがこないか確認するために チラチラ振り返る私の視野に、彼がちょろちょろ歩き回り カメラウィンドウの前に一列に並べられたカタログを 端から集め始め、集めきったところでしばらく 立っていたのがわかった。 彼がほかに移動したところでそこへ行って見ると、 しっかりカタログが積んである。 そして彼は、しばらく店内をウロチョロしてプリントが仕上がる前に、 そのたくさんのカタログを自転車の籠に入れて帰っていった。 数時間後、彼が仕上がりを取りに来た。 ポケットから出した、しわくちゃな預かり控えの紙を 照れくさそうに一生懸命に 手で伸ばしていた。 焼増しは一枚、31円。 彼は始終笑顔でポケットを探っていたが、 でてきたお金は10円。 そこでどうするか私と彼はしばし見つめあうことになる。 どうしてそうなったのか、 なんとなく彼の瞳がストレートで、 濁りのないように感じたから… 彼は彼で、私の目から視線をそらさないものだから しばし見つめあう事になってしまった。(傍から見たら変?) さて、どうしよう。 しかし、21円まけてやるわけにはいかない、 そんなことしてはいけないと 思った。 控えを渡し、家に取りに帰ってもらうことにした。 彼はまた照れくさそうに「しまったー」と呟きながら、 控えをポケットにしまい、帰り際に カウンターに置いてあった割引券を 2枚とって帰っていった。(また、持って行くんかい!) その日の帰りなんとなく考えた。 見た目は普通の男の子なのに 彼の瞳が濁りのないものであればあるほど 悲しいと思った。 彼を助けてくれる人たちがたくさんいることを 願うばかりだ。と、いうか自転車で暴走していないか そっちが心配だ。 さて、あのあと彼は31円を持って来て、 帰りにやはりカタログをどっさり持って帰ったらしい。 だからいま店はカタログが品薄だ。 今度来たら阻止しなければならない! |